車で人を轢いた

幸い、相手は無事で全くの無傷のようだった。
70歳手前のホームレスの男性だった。

事故現場は、信号のある2車線の丁字路で、自宅の近くだ。
信号が青になり、右折したら目の前に人がいた。
ブレーキをかけたが間に合わなかった。
右側のボンネットに当たり、男性は向こう側に倒れた。

進行方向の確認を怠った結果だ。
スピードも速かったかも知れない。


倒れた男性の無事を確認してから、抱き起こして道の脇に移動させ、自分の車も脇に移動させた。
目撃者の主婦と連絡先をやり取りしてから、警察を呼んだ。
目撃者は用事のため、現場から立ち去った。

警察を呼ぶことについて、相手は相当嫌がっていた。
「警察より今晩の飯代をくれ」と言われたが、それとこれとは違う話だと説得して警察を呼んだ。
警察を呼ばずにお金を渡して、なんとかやり過ごそうという考えも頭の中にはあった。


頭が混乱していて、警察には状況をうまく説明することができなかった。
事故直前の自分の行動は、ほとんど覚えていなかった。
目撃者に電話を掛けて、状況を教えてもらい、一旦整理して警察に説明した。



相手は無傷のようだった。一緒に病院に行くことを提案したが、断られた。
頭は打っていないか、痛いところはないか、病院には行かないのか、何度も念押ししたけど答えは同じだった。

被害が出ていないので、警察は物損事故として処理した。


警察が現場から去ったあと、男性に5000円をわたした。


疲れた。


--------------追記----------------
5000円を受け取ると、男性は歩いて去っていった。
「お気をつけてください」と行って、見送った。

結局、後のことを考えて、相手には自分の名前も連絡先も一切教えなかった。
警察を通してのみ、自分の正体が分かるようにしておいた。
そのほうがトラブルを回避できると考えたから。

自分は最後まで現場に残り、全て終わって誰も居なくなってから自宅に戻った。
車のぶつかった箇所を確認した。
中の部品が壊れていて、右側のヘッドライトが上がらなくなっていた。
ぶつかったときに部品が壊れることで、歩行者を傷つけないように出来ているのか、
・・・ほほう、よく出来てるな。。。と思った。

車を駐車場まで持って行った後、あたりを散歩して一通り落ち着いたので自宅に戻り、
目撃者の主婦に事故処理の経緯の説明と、お礼のために電話をかけた。

晩御飯を食べながら、両親に事故の経緯を説明した。

自室に戻り、破損した部品を調べて、見積もりの依頼をした。
ついでに、他に換えようと思っていた部品も。。。
自分は、他人を傷つけることができる道具にお金をつぎ込み、スピードを出して遊んでいる。


相手に怪我を負わせなくて良かった。
新しいタイヤを履いていて良かった。
警察を呼んで良かった、ひき逃げにならなくて良かった。
目撃者が居てくれて良かった。

さらに正直な気持ちを言うと、相手が身寄りのないホームレスでよかった。
こっちの落ち度をさほど責められなくて良かった。
相手に自分の正体を明かさなくて良かった。
車の被害が少なくてよかった。


週末にはまず、新しい眼鏡を作ろうと思う。視力は落ちているのが分かっているし、
歩行者の発見が遅れた理由のひとつとして、十分考えられるから。

自分自身の運転については矯正することが出来るだろうか。
おそらく、完璧な安全運転はしないだろうと思う。
ただ、今までの運転について見直したいと思っている。
自分以外の視点から自分の運転を考えようと思う。
他の車を観察して、どんな車が自分の運転に近いか、考えてみようと思う。
他人の振りをみて我が振りを直します。

事故は起きてからでは遅い。本当にそう思う。